インドで生きるということ/a Japanese living in India

意識高い系の旧帝大卒文系男子がインドに現地採用されてせっせと働く話

インドで現地採用職を志望した8つの理由(後編)

はじめに

前回記事にて、以下をリストにいたしました。

  1. 業界の転換ができる
  2. 残業ゼロ
  3. 有給休暇取り放題
  4. お金が貯めやすい
  5. 新興国での業務経験が積める
  6. 英語力の向上
  7. 別な海外にアクセスしやすい
  8. インドそのものに興味がある

 

今回は

  • 新興国での業務経験が積める
  • 英語力の向上
  • 別な海外にアクセスしやすい
  • インドそのものに興味がある

こちらについて説明していきます。

 

 

インドだからこその理由

前回記事における内容は「現地採用という雇用体系による長所」といった感じで、制度的な観点での説明でした。

今回はようやく「数ある外国の中でなぜインドなのか?」という地域性に対する回答です。インドで就労するにあたって得られる(と思われる)長所です。

 

5.新興国での業務経験が積める

具体的には、現地社会で現地人社員とビジネスを経験できる」ということです。その中でもインドおよびインド人は強烈です。
 
インドという地域の社会インフラ全般の脆弱さ、日本人と保有している世界観に大きな相違があることたとえば納期への意識、ひいては労働全般への意識、責任意識、「嘘」に対する感覚)を原因として、日本でスムーズにいくレベルの仕事内容であっても、あらゆる場面で社員と衝突したり計画がストップしたりします。

他国を経験している複数の駐在員の先輩から聞いた話では、「中国や東南アジアでは一定程度存在する、合理的に物事を進める姿勢や、日本に対するリスペクト(ルックイースト的感覚)が極めて希薄だ」と言っており、この言葉には妙に納得しました。

 

逆に、以上のようなハードな環境であるからこそ、ここでの業務は他のアジア地域よりも大きく成長に繋がるのだと考えます。具体的な能力としては以下になります。

(i).管理能力

駐在員ではなく現地採用として入社しても、同じ役職レベルのインド人に対する実質的な管理業務をすることになります。

内容としてはリマインダーとしてタスク自体の進捗管理を日常的に行うようなレベルですが、放っておくとタスクに一切手を付けなかったり案件の存在を忘れたりして進捗が止まることが多いので、重要です。

場合によっては、自分より上の役職のインド人にも同様の対応をすることがあります。


(ii).交渉力・論理性

どれだけ入念に案件概要や納期を伝えても、彼らなりの理論をもって仕事を断ろうとしてきたり、納期を破った後に堂々と言い訳をすることがあります。 

この際に相手を納得させたり、言い訳をさせる余地を与えないようコミュニケーションをするかという点が重要になります。

 

なお、こちら側に一定レベルの英語力がない場合、相手が内容を理解できなかったり、意図は把握しても舐められて不十分なまま終わったりして、再度同じ過ちを繰り返されたりします。


(iii).異文化理解・日本の客体化
「郷に入っては郷に従え」の考えを学ぶ必要もある。
なぜ決められた時間に出社できないのか、今日残業しなくては案件に支障が出る状況でも定時退社するのか。あるいは、なぜ定時5~10分前にオフィスを出てしまうのか。なぜ事前の連絡なく当日いきなり休むのか(体調不良は除く)。なぜ論理的な会話ができないのか、話し始めると止まらないのか(あるいは人の話を平気で遮るのか)。なぜ嘘を付いてしまうのか。
 
上記のような、日本人からすれば理解不能でしかない事象と向き合わざるを得なくなることで、現地社会の文化や宗教、歴史や家族制度など考え方の根底にあるものを理解する必要が生じています。
この点について学ぶ姿勢のないまま、日本におけるビジネスと同様のようなやり方を推進すると、インド人社員から強烈に嫌われます。
そのような人はインド人やインド社会を下に見る姿勢が露骨なので、同じ日本人からしても時に不快感を覚えるものでもあったりするので。
 
そうした相手方の理解というものが、結果的には日本人の「おかしな」風習や考え方、働き方を見直すきっかけにもなります。
最終的には、インドで仕事をする日系企業として、折り合いの付く形で上手く擦り合わせながら物事を進めていく能力が身についていきます。

6.英語力の向上

インドにおける英語は、ヒンディー語とならぶ「公用語」です。

北インドにおいて高等教育を受けたインド人の場合、家庭や同郷の人たちとは母語であるヒンディー語を使用し、外国人や南インド人(タミルナドゥ州など)と話す際に、初等教育からみっちり仕込まれた英語を使用します。

この点は、タイやベトナムなどの公用語が一つである地域と事情が異なる点です。

 

一般的に日系企業のグローバル法人の場合、社内でのコミュニケーション(会話、メール)言語は英語です。

そして、日系大手企業で雇用しているインド人に限定して言えば、大半が大卒であり

英語力は極めて高いです。基本的に「英語が得意」レベルの日本人がコミュニケーションを取る際、英語力ではまずこちら側が負けます。

 

以上のような背景があるため、業務を進めることそれ自体で英語を使用する機会があり、かつ英語力を伸ばすチャンスに恵まれています。

 

相手のほうが英語力はあるため、コミュニケーションにおいて言語面の齟齬がある場合は、まず間違いなく自分の側に非があります。そのため、業務を通じて英語を引き延ばしてくれる環境にあるといっても過言ではないです。

(英語が公用語でない地域の場合、相手の文法や語彙が間違っているからミスコミュニケーションが発生しているという可能性がありますからね。ここは大きな点でしょう。)

 

もちろん、「インド英語」と呼ばれるような、インド特有のアクセントや単語・熟語表現もあります。最初は何言ってるかわかりませんし、特有の熟語*1も初見では理解できません。ですが、それを経験することで、学校教育やTOEICで習う英米豪以外の英語を知る機会ともなります。

 

海外旅行などに行くと痛感しますが、英語はわれわれ日本人含めノンネイティヴ同士のコミュニケーションツールとしての役割が大きいです。そのため、教科書通りでない発音やアクセントに日常的に触れられるというのは、むしろ自己の成長にとって有益な環境だと思います。


7.別な海外にアクセスしやすい

 インドで生活をする以上、インドを起点にして世界地図を見るようになります。

 

隣国にパキスタン、バングラデシュ、ネパール。近場にイランやスリランカ。

日本にいるときは存在すらほぼ認識しないコーカサス諸国(ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン)や中央アジア諸国(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスなど)も視野に入ります。

 

日本に住んでいると行くのが大変なこのような地域も、インド発の航空機などでは

極めて短時間かつ安価に行くことができます。

 

また、タイやマレーシア、シンガポールなどの日本からでもアクセスしやすい東南アジア諸国も、インドからだとより安価かつ短時間で行けます。

 

8.インドそのものに興味がある

5. で提示しました内容と関連する箇所です。

まっとうに仕事をしていてもトラブルが延々と降ってくる環境であるため、インド人の持つ世界観やインド社会にあり方に対して「なぜ?」「どうして?」と絶えず疑問を抱きます。

 

また、出張や国内旅行をすれば、都市部と農村部との劇的なほどの格差を痛感しますし、駅やショッピングモールの外で物乞いに遭遇すれば、国民の間の経済的な格差を感じます。また、細かな場面ごとで、インドに根を張るカーストという階級的な格差にも注意が向きます。

 

インドで生活をして様々なことに目を向けるだけで、何かしらの驚きや違和感、社会の抱える課題というものにぶち当たるため、日本にいる時よりも思考の総量が増えます

 

日本では当たり前だと思っていたことが素晴らしいと感じたり、逆に日本社会の課題点に気付いたり。

 

自らの中長期的なキャリア形成においても、この点は有益だと思います。

自分がどのような分野に興味を持っているのか、どのような産業に価値を感じるのか、どのような社会課題に対して「解決したい」と感じることができるのか。日本では考えてもみなかった点が途端にクリアになるかもしれません。

 

 

まとめ

  • 新興国での業務経験が積める:
    仕事を通じて、一筋縄ではいかないインド人に対する管理能力や交渉力を得られ、異文化理解もできる。

  • 英語力の向上:
    語学力がきわめて高いインド人集団の中で実践力を鍛えられる。

  • 別な海外にアクセスしやすい:
    日本にいる時では行くことを検討すらしなかった国へアクセスできる。
    行く国や自身の待遇にもよるが、有給休暇制度や可処分所得を考慮すると、頻繁(3、4か月に一度)に長期間(1週間前後)行くことが可能。

  • インドそのものに興味がある:
    すべてが日本と異なる国で生活することによって、新しい気付きや自分の関心を再発見できる。そもそもインド自体が面白い国。

さいごに


前編と合わせ、ここまで読んでくださりありがとうございます。

ただし、海外における現地採用では、ブログにはまだ書いていない嫌なこと・不快になることも複数経験します(経験しました)。

他のテーマなどと合わせて投稿していきます。

*1:"Please do the needful"「必要な手配・作業を行ってください」が最も顕著な例。